トランプとゼレンスキーの「口論」会談後、日本でも広がったゼレンスキーの服装批判は的外れなものです。むしろ注目すべきは、トランプ御用記者の侮辱的質問に対するゼレンスキーの「神対応」と、会談決裂によってトランプが「プーチンの犬」というイメージを世界に広めた事実です。第1回「卑屈な従者が暴君を生む」第2回「無知を暴かれた暴君の逆上」につづく第3回の配信をお届けします(全3回)。※今回、途中から有料となります。


目次

  • 服装問題におけるトランプ御用記者の無礼
  • 戦時服装は「政治的制服」
  • ゼレンスキーの「神対応」
  • 会談決裂の政治的帰結――負けたのはトランプ
  • 暴君に対処する本当の知恵とは何か

服装問題におけるトランプ御用記者の無礼

ゼレンスキーの服装について言うと、これにいちゃもんを付ける発言をした記者が会談の記者席にいたが、あれはトランプが御指名で呼んだ右翼メディア「真のアメリカの声(Real America's Voice)」の悪名高い記者、ブライアン・グレンである。

この記者は、ゼレンスキーに"Why don't you wear a suit"(「なぜスーツを着ないのか?」)と言ったあと、さらに畳みかけて、"Do you own a suit?"(「スーツをもっているのか?」)という質問を浴びせている。ホワイトハウスに招かれたこの外国の大統領に対して、こんな公然たる侮辱と言うべき質問をするのは、報道倫理にも外交儀礼にも反している。

スーツを着ないラフな格好で公式の場にしばしば出てくるのはイーロン・マスクも同じなのに、そんなことはおかまいなし、という問題もあるが、それ以上に重大なことがある。

グレンは、会談の始まる前、ゼレンスキーが登場したときに、トランプが"Ooh, you're dressed up!"と言ってゼレンスキーをからかったのを聞いており、そのトランプの意を受けた発言だと後で報道されている。

グレンは「スーツをもっているのか?」と侮辱の度合いをさらに強めており、これはゼレンスキーを挑発するために言ったとしか思えない。

戦時服装は「政治的制服」

まず指摘しておくが、ゼレンスキーのあの非常事態用服装は戦闘状態にあるウクライナの状況に指導者が即応した彼の「政治的制服」である。ゼレンスキーはどの外交場面でもあの服装で行き、欧州諸国だけでなくバイデン政権下の米国政治家たちも、それを敬意をもって受け入れていた。

トランプも記者のグレンもそれを知らなかったはずがない。服装に関するトランプの「からかい」とグレンの侮辱は、彼らの側の外交儀礼違犯である。

ホワイトハウスでゼレンスキーがトランプらに侮辱された後、英国のチャールズ国王が訪英したゼレンスキーを励ますためにバッキンガム宮廷に招いた。そのときも、ゼレンスキーはあの服装で訪問し、チャールズ国王はそれを暖かく受け入れた。何という対照だろう。

ゼレンスキーの服装を無礼だなどと言う者が日本にも大勢いるが、この服装問題で無礼者と世界で笑われているのはあのトランプとその追従記者のグレンだということを知るべきである。

(ちなみに、本年8月18日(日本時間)のトランプとのホワイトハウス会談ではゼレンスキーは、背広とは異なるものの襟付きの上着を着用したが、これは「的外れな問題で無用の軋轢を生むのを避ける」ための「トランプ専用対応」であって、他のまともな政治家を相手にした外交場面では、彼は従来の戦時服装規律に従っている。)

ゼレンスキーの「神対応」

しかし、ここでさらに強調しておきたい点がある。ゼレンスキーは、グレンの無礼きわまりない挑発に対し、それに乗せられることなく、次のように、見事な応答をした。