今回から新たなテーマでニュースレターをお届けします。2025年3月、米国トランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の「口論」会談が行われましたが、そこで露わになったのは、トランプの暴走を止めるどころか、それを許し、時には称賛さえする国内外の「従者」たちの姿でした。第二次トランプ政権下で進む立憲民主主義の破壊と、それを支える卑屈な追従の構造を、会談の検証を通じて明らかにします。全3回。
目次
- 暴君トランプを掣肘(せいちゅう)できる者はもはやいないのか
- 「トランプvsゼレンスキー ホワイトハウス会談決裂事件」の意味
- 穏やかな開始から荒れた展開へ
暴君トランプを掣肘(せいちゅう)できる者はもはやいないのか
トランプの暴走が止まらない。ブレーキが壊れて、行く手を阻むものをすべてなぎ倒して猛進するブルドーザーのようである。トランプ第一次政権のときは、まだ周囲に政治のプロがおり、彼の暴走を止めようとした。しかし、トランプ第二次政権では、能力や経験は二の次で、忠誠度の高さだけで閣僚や大統領府スタッフを選び、自分の周囲をイエスマンだけで固めた。
本来なら連邦議会がホワイトハウスの暴走をチェックすべきだが、上下両院とも共和党が支配し、しかもこの共和党がトランプ党になってしまっている。連邦制の下で強い自治権を保障されているはずの州に対しても、トランプは軍部まで動員した圧力をかけている。いまや司法だけがトランプの暴走に歯止めをかける頼みの綱だが、この綱も断ち切られるリスクがゼロではない。
トランプのこのような暴走の責任は、トランプだけでなく、それを許している従者たちにある。王様がいくら威張っても、臣下が王様に従わなければ、王様は実権を振るえない。いまの米国政府のトランプの従者たちは、トランプを諫めるどころか、トランプを喜ばせることに意を注ぐ、おべっか使いたちである。暴君を御輿に担いで暴走する手下たちは、暴政の共犯者であり、「共同正犯」とさえ言えるかもしれない。
残念ながら、この追従(ついしょう)の姿勢は米国内だけでなく、トランプと外交的折衝をする外国の首脳たちにも多く見られる。彼らは腹の中ではトランプの横暴ぶりに反発していても、米国の強大な経済力・軍事力のゆえに、トランプを怒らせるとひどい目に合うと恐れて、この暴君に「あなたは偉大で、卓越した政治力をおもちです。どうか、そのお力で私どもを助けてください」と、膝を屈して頼む姿勢を見せている。
もっと残念なことがある。トランプ政権下の米国は立憲民主主義を掘り崩しつつあるが、この価値観を共有する諸国の政治的指導者の中には、トランプに対して卑屈にならず、言うべきことをはっきり言う者もいる。しかし、こういう人物の勇気を「傍観者」たちが賞賛するどころか、攻撃しているのである。
はっきり異を唱える外国の政治家に対してトランプが逆切れして、その政治家の国に厳しい「お仕置き」をすると、悪いのはトランプではなく、トランプを怒らせたその政治家だと、後者の方をバッシングする声が、なんと、米国のトランピアンたちの間だけでなく、日本を含む諸外国の世論の中でも響いているのである。
「トランプvsゼレンスキー ホワイトハウス会談決裂事件」の意味
その顕著な一例は、本年2025年3月1日(日本時間)にホワイトハウスで行われた、ウクライナ戦争の終結方法をめぐるウクライナのゼレンスキー大統領とトランプ大統領との公開会談である。
この場でゼレンスキー大統領が、ロシアとウクライナの停戦交渉に関するトランプとヴァンス副大統領の事実認識の誤りを正そうとしたところ、トランプが逆切れして、会談が決裂し、トランプはウクライナに対する武器支援と情報支援を打ち切った。
しかし、驚くべきことに、この会談決裂に対し、トランプを非難するどころか、スーツなしの「戦時服装」で、通訳なしに会談に臨んだゼレンスキーの方が、トランプに対し無礼を働いたとして、ゼレンスキーをバッシングし、「トランプが怒るのも無理はない」などと、トランプを擁護する声が日本でも広がった。私は驚きを通り越して、呆れてしまった。
もう、このことを忘れてしまっている人々も多いかもしれないが、暴君の暴走を許している責任を負う「卑屈な従者」の中の、最大の責任者は、「卑屈な従者」の卑屈性こそ美徳だと賞賛し、それを拒否するまともな政治家を叩く「我ら人民」であることを自覚していただくために、ここで、この一件を振り返っておきたい。
ニュース番組で流れたのは、トランプが逆切れしてゼレンスキーを攻撃する前後数分のシーンで、それだけ見ても、トランプの態度のひどさは私には分かった。しかし、ゼレンスキー・バッシングが広がるのも仕方がないと言えるような要素が他の場面にあったのかどうか、きっちり確認するために、会談全体をYouTubeで見てみた。
私が見たのは以下のサイトだが、現在ではこの動画は再生不能になっている。
https://youtu.be/FOx8H22IUWs?si=NJuvqUvfDml4o-4b
(現在、会談の一部は他の動画で視聴することができる。例えば、TBS NEWS DIG Powered by JNN「【日本語字幕】トランプ×ゼレンスキー 異例の“口論”会談「『停戦は望んでいない』と言うのか」 ゼレンスキー氏はウクライナ情勢めぐりロシアへの譲歩懸念」(2025.9.5アクセス))
穏やかな開始から荒れた展開へ
動画内容についての以下の記述は動画を観た後に、本サイトを知らせてくれた人にメールで送った感想に基づいている。
内容の紹介に入る前に、余談を一つ。この動画には、AIの音声認識による英語字幕もついていたが、ところどころ間違いもあった。例えば、truce(停戦)をtruth(真理)としたり、記者が質問で触れたトランプとプーチンのthe last call(最後の電話)を、the last school(最後の学校)にしていたり。
AI字幕の間違いに気づくのは、私のヒアリング能力が高いからというより、AIの音声認識が機械的で、使用されている単語を文脈から判断する能力がAIにはまだ乏しいからである。それでも、間違いを見つけると、「AIに勝った!」と自己満足でき、結構面白い「ゲーム」だった。
閑話休題。会談は一時間ほどだったと思うが、その3分の2くらいまでは、きわめて穏やかに進んでいた。ところが、最後の3分の1で急に荒れた。
ニュース等で頻繁に流していたのは、この荒れた部分である。なぜここで荒れたのか、その理由をはっきりさせることが重要である。
まとめ・次回予告
トランプとゼレンスキーの「口論」会談は、単なる外交的失敗ではありません。トランプ政権下で進む民主主義の破綻と、それを支える国内外の「卑屈な従者」たちの存在を浮き彫りにした象徴的事件です。特に日本で起きたゼレンスキー・バッシングは、我々自身が暴君の暴走を許す共犯者となっている現実を突きつけています。次回は、会談で実際に何が語られ、なぜトランプが逆上したのか、動画の分析を通じて真因に迫ります。