コロナ禍を契機に、オンライン教育が普及し、新しい学び方が根づきました。しかし一方で、デジタル環境の整備状況や各家庭の経済状況が、教育の格差を顕在化しています。今回は日本と米国の事例を通じて、教育格差の実態を明らかにし、その課題を乗り越えるためのヒントを探ります。第1回「格差を乗り越える仕組み」につづく第2回。


目次

  • コロナ禍で浮き彫りになった新たな格差
  • データが示す教育機会の格差――日本の事例から
  • 「格差」か「選択肢」か――アメリカの事例から
  • 自律的学習の光と影

コロナ禍で浮き彫りになった新たな格差

「ビートルズがやってくる  ヤァ!ヤァ!ヤァ!」が分かるのは、けっこう年配の方だと思います(僕も実はこの映画は見たことないんですが、ちょっとパロディー風にタイトルに入れてみました)。ここで言いたいのは、たとえばコロナウイルスが突然やってきたことで、急に格差が生まれることもあるということです。コロナ禍では、オンラインで学べる人と学べない人にはっきり格差が出てしまいました。

当時、僕は京都大学の高等教育研究開発推進センター長と教育担当理事補をしていて、すぐに職場や学内の先生がたに協力していただいて、同センターとしてオンライン授業を支援するためのリソースサイトを立ち上げました。

ブッシュ(息子)政権時代の「No Child Left Behind(子どもを一人も置き去りにするな)」という政策をもじって、「No Student Left Behind(学生を一人も取り残すな)」を合言葉に、みんながオンラインで学べるようにすることをミッションにしました。当時「学びを止めるな」というスローガンも広まっていて、このサイトでもそれを掲げていました。

オンライン授業支援サイト「Teaching Online@京大」(3.26.2020~)

コロナ禍は皆さんも体験されたことで、各大学や初等中等教育機関の先生たちも本当に苦労しましたよね。当時、対面授業ができない中で、どうやったら格差を乗り越えられるか、みんなで考えたと思います。僕も仕事ではセンターを率いつつ、一教員としても自分でオンライン授業用の可動式機材カートを作って使ったりしました。

自作のハイフレックス/ハイブリッド授業用カート

データが示す教育機会の格差――日本の事例から

先日、素敵な本に出会いました。2021年に松岡亮二先生(当時は早稲田大学、現在は龍谷大学)他22人の先生方が書かれた『教育論の新常識――格差・学力・政策・未来 』(中公新書ラクレ、2021年)という力作です。近年の教育について新しい視点や面白いアイデア、そして厳しい批判も書かれていて、とても読み応えがあります。

本書の中で多喜弘文先生(当時は法政大学、現在は東京大学)が、コロナ禍の教育格差についてグラフで解説しています。

松岡亮二編著『教育論の新常識 』(2021年)より

黒色が「学校でオンライン教育を受けた割合」、グレーが「学校外でオンライン教育を受けた割合」を示しており、三大都市圏と非三大都市圏部ともに、結局、世帯収入が低い家庭の子のほうが学校でオンライン授業を受けられる確率が低かったという格差がはっきりと出ています。