話題は追っているが、いま何が論点なの?――「論点の地図」は、その月のニュースレターの内容を見取り図として整理する保存版です。主要な論点/構図/経緯/いま注目する点などをコンパクトに押さえます。必要なときに戻ってご参照できます。(文責:編集部) ※今号は途中から有料です。


目次

【1】1月配信の核心
【2】1月配信の記事(4本)
【3】1月の要旨
【4】主要な論点
 論点① 独裁者打倒は「正当な戦争原因」になるのか——目的と手段の切り分け
 論点② 「法の執行」名目は成立するのか——麻薬訴追を口実にした武力行使
 論点③ 「民主化」は本当に目的なのか——「マドゥロなきマドゥロ体制」の温存
 論点④ 資源は誰のものか——石油権益の要求と「資源の呪い」
【5】構図
【6】経緯
【7】注目
【8】用語


【1】1月配信の核心

独裁者打倒や「民主化」は、それ自体が軍事侵攻(侵略)を正当化する理由にはなりません。さらに「麻薬取締り」「民主化」「石油権益」という大義名分を点検すると、実際には権威主義体制の温存と資源支配へ帰結し、ヴェネズエラを縛る「資源の呪い」を強める構図が見えてきます。


【2】1月配信の記事(4本)

[2026年1月7日]Coffee Break☕ ヴェネズエラ侵攻の何が問題か(1)――目的(独裁者打倒)は手段(侵略)を正当化しない
☝🏼「悪政の是正」や「体制変革」は、正戦論・国際法の枠組みでは「正当な戦争原因」にならない。体制を変える責任は当事国民にあり、外部の軍事介入は原則として越えてはならない一線を越える。

Coffee Break☕ ヴェネズエラ侵攻の何が問題か(1)――目的(独裁者打倒)は手段(侵略)を正当化しない
正月休みの後、本年最初の配信です。ウクライナ戦争論のまとめに入るつもりでしたが、日本でお屠蘇気分の続く中、米国は1月2日深夜から3日未明にかけて、かねてから威嚇してきたヴェネズエラ侵攻とマドゥロ大統領夫妻拘束を実行しました。本年元旦の朝日新聞のオピニオン欄で、国際社会における法の支配の危機に関する私のインタビュー記事が出ました(3日の朝日新聞デジタルに拡充版掲載 https://www.asahi.com/articles/ASTDM4V8YTDMUPQJ00FM.html)。その直後に、トランプがこの危機をさらに深刻化させるこんな蛮行に走り、平手打ちを食らった気分です。これはウクライナ戦争とも関係するので、後者についてまとめる前に触れざるを得ません。Coffee Breakという冠文句は、コーヒーで正月の酔いを覚まして向き合うべきシリアスな問題という意味で受け止めてください。 目次 * マドゥロ体制の腐敗と強権性 * 積極的正戦論から消極的正戦論へ――悪政の是正は「正当な戦争原因」ではない * マドゥロ体制変革の権限と責任はヴェネズエラ国民にある マドゥロ体制の腐敗と

 

[2026年1月17日]Coffee Break☕ ヴェネズエラ侵攻の何が問題か(2)――麻薬犯罪訴追論と民主化促進論の嘘を暴く
☝🏼「法の執行(麻薬取締り)」と言ったり「戦争行為」と言ったりする御都合主義は破綻している。さらに「民主化」の名目とは裏腹に、米国は実態として「看板だけ替えた」体制(=マドゥロなきマドゥロ体制)を承認している。

Coffee Break☕ ヴェネズエラ侵攻の何が問題か(2)――麻薬犯罪訴追論と民主化促進論の嘘を暴く
トランプ政権はヴェネズエラ侵攻を「麻薬取締り」と「民主化」で正当化するが、その理屈は国際法と現実の動きに照らして破綻している。「ヴェネズエラ侵攻の何が問題か(1)――目的(独裁者打倒)は手段(侵略)を正当化しない」に続き、その欺瞞を検証する。 ※今回、途中から有料になります。 目次 * ヴェネズエラ侵攻におけるトランプ政権の「大義名分」 * 麻薬犯罪訴追論の支離滅裂 * トランプ政権による「マドゥロなきマドゥロ体制」の温存 * ヴェネズエラ支配層とトランプ政権との隠された協働? ヴェネズエラ侵攻におけるトランプ政権の「大義名分」 前回、ヴェネズエラのマドゥロ体制の打倒という「目的」が正しいとしても、米国による軍事侵攻という「手段」は正当化できないことを論じました。今回と次回は、トランプ政権がヴェネズエラ侵攻を正当化する「目的」として掲げている「大義名分」が不当ないし欺瞞的であることを論じます。トランプ政権は、三つの大義名分を挙げています。 第一に、マドゥロ大統領夫妻が、米国に麻薬を密輸するヴェネズエラの犯罪集団の頭目で、米国の司法で彼らを裁くために逮捕する必要があ

 

[2026年1月24日]Coffee Break☕ ヴェネズエラ侵攻の何が問題か(3)――トランプの「ジャイアン主義」を駁す
☝🏼「ヴェネズエラの石油は米国のものだ」という主張は、所有論(ロック)や国際法の主権原理に照らして成立しない。仮に補償問題があるとしても、軍事侵攻で「資源そのもの」を取り返す理屈にはならない。

Coffee Break☕ ヴェネズエラ侵攻の何が問題か(3)――トランプの「ジャイアン主義」を駁す
トランプ政権が掲げる「ヴェネズエラ侵攻の大義」の一つ、石油権益確保論は正当化できるのか。本稿では「ヴェネズエラの石油は米国のものだ」という主張を、法哲学と国際法の観点から検証し、その論理的破綻を明らかにします。※今回、途中から有料になります。 目次 * 「ヴェネズエラの石油は米国のもの」という主張の「哲学的論拠」 * ロックは、トランプ流ジャイアンを支持せず * なぜチャベスは外国石油企業の資産を国有化したのか ヴェネズエラ侵攻について三回目の配信です。トランプ政権が掲げる三つの「大義名分」の最終項目、石油権益確保分与論を検討します。一回で済ませるつもりでしたが、話が長くなるので二回に分割します。今回は、ヴェネズエラ石油資源に対するトランプの権利主張の法哲学的検証を行い、次回、石油への強欲による米国のヴェネズエラ干渉の根底にある「資源の呪い」の問題を解明します。 「ヴェネズエラの石油は米国のもの」という主張の「哲学的論拠」 ヴェネズエラの社会主義化を進めたチャベス政権下において、米国を含む外国の石油企業の資産が国有化されたことに触れました。これについてトランプ大統領

 

[2026年1月29日]Coffee Break☕ ヴェネズエラ侵攻の何が問題か(4)――権威主義体制温存が強める「資源の呪い」
☝🏼資源が豊かな途上国では資源への利権を求めて国内抗争と外国の介入が熾烈化し、経済発展に必要な安定した民主体制の確立が阻害されるため、結果として国民を困窮させ続ける資源の呪いが支配する。

Coffee Break☕ ヴェネズエラ侵攻の何が問題か(4)――トランプの権威主義体制温存戦略が強める「資源の呪い」
石油大国ヴェネズエラは、なぜ貧困と抑圧から抜け出せないのか。トランプ政権の「体制温存」が「資源の呪い」を強める構図を検証する。※今回、途中から有料になります。 目次 * チャベス主義体制の変質――「21世紀の社会主義」から権威主義体制へ * 権威主義体制の政治的利用価値 * 政治体制を不安定化・抑圧化させる「資源の呪い」 前回、最後に述べたように、「21世紀の社会主義」を目指したチャベス政権は、世界最大と言われる豊かな石油資源に恵まれながら国民が窮乏し続ける「資源の呪い(resource curse)」からヴェネズエラを脱却させるのに失敗しました。米国のヴェネズエラ侵攻とその後の政治的干渉は、この「呪い」の呪縛力をさらに強めています。今回、この点を明らかにし、抑圧的体制の民主化の課題に国際社会はいかに対処すべきかという問題への含意も探ります。 チャベス主義体制の変質――「21世紀の社会主義」から権威主義体制へ チャベス政権は、1月7日配信記事でも言ったように、石油の富の再分配により国民の支持を当初は広げました。しかし、盤石の政治的・経済的安定性を保持していたわけでは

【3】1月の要旨

1月は、米国によるヴェネズエラ侵攻をめぐり、「独裁者打倒なら侵略も許されるのか」という根本問題を、正戦論と国際法の観点から見直しました。結論は明確で、望ましい目的が、禁じ手の手段を正当化するわけではない――という一点です。