教育は「プロセス」を重視し、社会は「成果」を求める――この関係は長く両立してきました。しかし、AIの普及によってプロセスを経なくても一定の成果を出せるようになり、その前提が揺らいでいます。今回は、AI時代における教育と社会の関係、そして教育が果たすべき役割を考えます。
目次
- 「成果」を求める社会、「プロセス」を重視する教育
- AI時代に教育が守るべきものとは
「成果」を求める社会、「プロセス」を重視する教育
――教育では「プロセス」が大事なのは分かります。ただ、社会、特にビジネスの世界では、それよりも「成果」が求められます。この関係はどう考えればよいでしょうか。
飯吉 教育と社会では、もともと重視するものが異なります。社会では一般的には短時間で成果を出すことが評価されます。一方、教育では、どのように考え、試行錯誤し、何を学んだのかというプロセスにも価値が置かれてきました。
これまでは、教育で培った力が時間をかけて社会で成果として現れることで、両者はつながっていました。しかし、AIの普及によってプロセスを十分に経なくても一定の成果を出せるようになり、この関係が揺らいでいます。
その結果、社会ではますます成果が重視され、教育にも効率を優先する圧力がかかりやすくなります。ただし、教育が効率性や短期的な成果を過度に重視すれば、学生はAIに頼りがちになり、思考力や創造力といった知的能力が低下するおそれがあります。
また、社会も一様ではありません。効率性や短期的な成果が重視される領域もあれば、商品開発や企画立案のように時間をかけて熟考し検討することが不可欠な分野もあります。したがって、「社会=効率・成果重視」と単純に捉えるのではなく、どのような力を育てるのかを見極める必要があります。
教育は社会に従属するものでも、社会から切り離されるものでもありません。AIが効率的に成果を生み出す力を持つようになった今、人間には、その結果を鵜呑みにせず、自ら考え、意味づけ、判断し、新たな問いを立てる力が求められます。教育は、これらの能力を基礎から育成する場であるべきだと思います。
