1990年代以降、デジタル革命の波が到来。90年代、2000年代、2010年代——それぞれの10年を技術と教育の特徴からどう捉えるか。「E・O・C」という3つの頭文字で読み解いていきます。「技術は予測できても、使い方は時代しだい?」に続く第6回。


目次

  • 時代を象徴するキーワードの頭文字
  • 1990年代「Eの時代」——アナログからデジタルへ
  • 2000年代「Oの時代」——開放と共有の精神
  • 2010年代「Cの時代」——つながりが生む新しい価値

時代を象徴するキーワードの頭文字

前回は、技術と教育における先人たちの未来予測を見てきました。では、本格的なデジタル社会の幕開けとなった1990年以降を、どう捉えればよいでしょうか。1990年代から2010年代の約30年間を振り返って、時代の特徴を象徴するキーワードの頭文字で整理すると、「Eの時代」「Oの時代」「Cの時代」となります。「Eの時代」と「Oの時代」は、2004年にJ.M. Unsworth教授が米国の高等教育専門紙The Chronicle of Higher Educationに寄稿された"The Next Wave: Liberation Technology"という論考の中で名付けられ、その後の2010年代の「Cの時代」は私が名付けました。

それぞれの時代を約10年ごとに区切ると、前の時代が築いた基盤の上に新しい技術や価値観が積み重なってきたことがわかりやすくなります。まるで階段を一段ずつ上るように、デジタル社会は進化を遂げてきたのです。順を追って見ていきましょう。

 

1990年代「Eの時代」——アナログからデジタルへ

1990年代は「Eの時代」、つまり電子化(Electronic)の波が押し寄せた時代です。この時期、インターネットが企業や家庭に急速に拡がり、e-コマース、e-ビジネス、e-パブリッシング、e-ラーニングといった「e」で始まるサービスが次々と登場しました。すべてに「e」がつくことが、いかにも革新的に感じられた時代でした。

特に1995年は転換点となる年でした。Windows 95の発売により、パソコンが一気に使いやすくなり、一般の人々にもインターネットが身近なものになりました。同じ年にAmazonのネット書店サービスが開始され、オンラインで本を注文するという新しい購買体験が始まります。さらに1998年にはGoogleが創設され、膨大な情報の海から必要な情報を見つけ出す検索という行為が、私たちの日常に欠かせないものとなりました。これらは現在のデジタル社会の基盤となる、極めて重要な出来事でした。

技術と教育の分野では、Gopher(1991)やWWW(1991)といった情報共有の仕組み、Mosaic(1993)という初期のウェブブラウザ、XML(1996)というデータ記述言語、そしてWebCT & Blackboard(1997)という学習管理システムなどが登場しています。この時代の主たる革新は、紙の書類、対面での会議、物理的な店舗といった既存のアナログシステムを、デジタルに置き換えることでした。効率化と利便性の向上が最大の目標だった、という点では日本で最近進められているDX化と本質的には同じです。

2000年代「Oの時代」——開放と共有の精神

2000年代は「Oの時代」、オープン(Open)な共有社会の時代です。単にデジタル化するだけでなく、その成果を広く開放し、皆で共有しようという新しい価値観が芽生えました。オープンソース、オープンシステム、オープンアクセス、オープンリサーチ、オープンエデュケーションなど、「オープン」という概念が時代の合言葉になりました。このようなムーブメントは、1990年代にインターネットによる電子化とオンライン化が進んだからこそ台頭したといえます。