デジタル革命による技術と教育の変化は、電子化(E)、オープン共有(O)、つながり(C)の時代を経て、2020年代には学習者一人ひとりにおける最適化を特徴とする「Pの時代」を迎えました。しかし、AIやXRなど多様な教育手法が利用可能になった今、「何を選び、どう組み合わせるべきか」という新たな課題が浮上し、さらに次の時代に向かいつつあります。「E・O・Cで読み解く30年の軌跡」に続く第7回。


目次

  • 「P の時代」の到来
  • 「Pの時代」から「Vの時代」へ——選択肢の時代の到来
  • 「ベストミックス」という考え方
  • AI 時代における評価方法の根本的な見直し

「P の時代」の到来

1990年代から2010年代までの技術と教育の流れを振り返ると、デジタル革命が段階的に進んできたことが分かります。私たちは、電子化(Electronic)によるデジタル情報の時代(Eの時代)、インターネットを通じた知識のオープン(Open)な共有の時代(Oの時代)、そしてSNSやクラウドがもたらしたつながり(Connection)の時代(Cの時代)を経験してきました。

そして2020年代、教育現場ではこれらの基盤技術やAIを活用した、新たな教育アプローチへの転換が加速しています。従来の一斉授業型の画一的な教育から、学習者一人ひとりに焦点を当てた教育への大きなシフトです。この変化を象徴するのが、Pで始まる一連の概念群です。

具体的には以下のような要素が挙げられます。

  • 個人対応(Personalization):学習者一人ひとりの理解度や学習スタイルに合わせた教育の提供
  • 個人の好み(Preference):学習者の興味関心に基づく学習コンテンツや学習方法の選択と推薦
  • プロジェクト型学習(Project-Based Learning):実践的な課題解決プロジェクトを通じた能動的学習
  • 問題解決型学習(Problem-Based Learning):現実の問題を題材とした探究的な学習
  • プレイアブル(Playable):ゲーミフィケーションによる学習のエデュテイメント化と動機づけの向上
  • 予測(Prediction):AIによる学習成果の予測と最適な学習方法・経路の提案
  • プライバシー保護(Privacy):教育・学習データ活用における適切な個人情報の管理

これらの手法は、AIをはじめとする多様なテクノロジーとツールの急速な発展によって支えられ、実現可能になりました。私たちは、この段階を「Pの時代」と呼ぶことができるでしょう。

「Pの時代」から「Vの時代」へ——選択肢の時代の到来

しかし、個別最適化の手法やツールが充実してきたことで、新たな課題が浮上してきました。それは「選択肢が多すぎて、何をどう組み合わせればよいのか分からない」という問題です。プロジェクト型学習、AI活用、ゲーミフィケーション、XR技術……様々な手法が利用可能になった今、学習者や教育者は「何を選び、どう組み合わせるべきか」という判断を迫られています。

この状況こそが、「Vの時代」への必然的移行を示唆しています。「Vの時代」の本質的特徴は、単一の手法や技術に依存するのではなく、豊富な選択肢の中から学習目標と学習者の特性に応じて最適な組み合わせを見つけることにあります。

「Vの時代」を特徴づけるキーワードは次のとおりです。

  • 多目的性(Versatile):一つのツールや手法を複数の教育目標を達成するために活用する柔軟性
  • 多様性(Variety):豊富な選択肢の中から学習者に最適なものを選択できる環境
  • 価値(Value):何をどのように学ぶか教えるかのについての価値を見極め、実践する視点
  • 妥当性・有効性(Validity):科学的根拠に基づいた教育手法の選択と評価

留意すべきは、例えば、XR(extended realityまたはcross reality)、つまりVR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)のような先端技術も確かにこの時代の重要な要素ではありますが、それ自体が目的ではないということです。むしろ重要なのは、利用可能で多様なこれらの選択肢の中から、学習目標や学習者の特性に応じて最も適切な組み合わせを見つけることにあります。

「ベストミックス」という考え方

現在、学習・教育に必要な基本的な材料やツールはかなり豊富に出揃ってきています。デジタル教材、協働学習プラットフォーム、AIツール、評価システムなど、それぞれについて様々な選択肢が存在します。問題は、それらをいかに効果的に組み合わせるかということです。