最新ICT機器を導入しても、必ずしも学力向上につながるとは限らない――米国で行われた「25ドル報酬」実験は興味深い結果を示しました。そこから分かるのは、技術革新だけでなく、学習者の動機を変えることも同じように重要だということです。第3回「やる気のある学生だけに役に立つ教育メディア?」に続く第4回。


目次

  • ICTへの期待と現実ギャップ
  • 教育の文明と文化
  • 教育イノベーションをめぐって

ICTへの期待と現実ギャップ

ICT(情報通信技術)活用教育というと、どうしてもその時々の華々しい最新の機器やツールが思い浮かびます。

ところが、それらを使えば必ず学力が伸びるかというと、そうとは限らないのは皆さんもご承知の通りだと思います。「学生の目は輝きましたが、成績は変わりませんでした」ということはよくあるし、下手をすると「学生の目は輝いたのに、成績が下がりました」みたいなことすらあります。

次の図の左は教育とテクノロージを扱った雑誌の表紙です。教育・学習のためのいろいろな機器やツールを紹介しています。

図の右は、2010年のタイム誌の表紙で、”Should Schools Bribe Kids?”(学校は子どもたちをお金で釣るべきか?)という特集記事がフィーチャーされています。この記事で紹介されたのは、アメリカの教育研究者による小学校での実験です。

幾つかの実験がおこなわれたのですが、その一例としては、小学校4年生の子どもたちに「次のテストで成績が上がったら25ドルあげるよ」(当時2500円程度)と言っただけだったそうです。先生は教え方を変えず、特に何か特別なICT教材を使ったりしません。それを言っただけでどうなったと思いますか。ほとんど全員の成績が上がったのです。

当時、これを読んだ僕は、「本当であるなら、教育方法学やインストラクションデザイン、ICT活用教育などは、子どもたちの成績を上げるために、それほど重要ではない」という話になるのではないかと思いました。

「アメリカというのは拝金主義の国だな」と思われるかもしれませんが、例えば、「どうして大学に行くのですか」と尋ねられたら、「よい仕事に就けるから」「生涯年収が上がるから」みたいなことを皆さんは考えますよね。実は、頑張って勉強して成績を上げるモチベーションが何かという点では、本質的にあまり変わらない。「25ドルあげるから頑張れよ」というのと、「いい仕事に就けるから大学受験を頑張れよ」というのはかなり似ている感じです。

教育の文明と文化

教育分野のイノベーションについて考えるとき、私は「文明」と「文化」の2つの視点から捉えるべきだと思っています。