AIを教育に取り入れるとき、私たちは何を「効果」と呼ぶのでしょうか。成果が出ればよいのか、それとも人の力が伸びていることなのか。“effect with”、“effect of”、“effect through” という枠組みは、この問いに示唆を与えます。今回は、この三つの視点からAI活用の教育的意味を再考します。


目次

  • 教育におけるAIの効果をどう捉えるか
  • effect with――AIを使っている間だけ得られる効果
  • effect of――AIを使った経験が、人の知力として残る効果
  • effect through――AIによって学び方そのものが変容する効果
  • 重要なのは「成果」よりも「プロセス」

教育におけるAIの効果をどう捉えるか

思い起こせば、四半世紀以上前、私は米国で「個人の学ぶ能力を拡張する認知ツール(Cognitive Tools)の開発・利用・評価」をテーマに博士研究に取り組みました。

その研究を通じて得たことの一つに、AIを教育現場や学生の学びに活用しようとするときに、とても役立つ考え方があります。高等教育に限らず幅広い教育の文脈で参考になる枠組みです。1990年代に提唱され、その後の技術発展を踏まえて発展してきた、“effect with”、“effect of”、“effect through” という3つの概念(Salomon & Perkins, 2005)(注1)です。以下では、それぞれを簡単に整理してみます。

(注1)Salomon, G., & Perkins, D. N. (2005). "Do Technologies Make Us Smarter? Intellectual Amplification with, of and Through Technology." In D. D. Preiss, & R. Sternberg (Eds.), Intelligence and Technology (pp. 71-86). Mahwah, NJ: LEA Publishers.

 

effect with――AIを使っている間だけ得られる効果

これは、AIに知的作業を依頼し、対話しながら進めることで、その場で初めて達成できる成果を指します。理想は、人間とAIが互いの強みを補い合い、相乗効果を生むことです。