AI時代の到来によって、従来の講義や演習だけでは対応しきれない教育課題が目立つようになってきました。これからは、学生がAIと協働しながら創造的に学びつつ、人間ならではの知的能力(感性、批判的思考、構想力など)を発揮できる学習環境を整えることが求められます。
目次
- AI時代の教育手法を模索する
- AIとの協働の可能性―「吾輩はAIである」
- 創作パートナーとしてのAI―「ガチャ、大学へ」
- 「発明は必要の母ではない」
AI時代の教育手法を模索する
AI時代になり、従来型の授業や評価方法には限界が見え始めてきました。そのため、新しい教育手法を開発し、学生がAIと協働しながら創造的に学べる環境を作ることが急務になっています。とりわけ重要なのは、AIに任せられる部分が増えるほど、人間が本来発揮すべき力――問いを立てる力、意味づける力、批判的に考える力、表現する力――をどう育てるかです。
そこで私の大学院ゼミでは、もう十年以上も前から、「御題Based-Learning」という独自の教授学習方法を考案し少人数授業をおこなってきました。毎週異なる大喜利的な“創造的なお題”を出し、学生は1週間かけて自由に取り組み、次回の授業で成果を発表し講評し合うという形式です。
この手法の特徴は、次のように整理できます。
能動的学習を引き出す
御題に向き合う過程で、情報探索や知識構築が自発的に進み、学びの主体性(ownership)が育ちます。
反転授業として機能する
授業前に各自が御題に取り組み、授業中は発表と相互学習が中心になります。教員は教える人というより、御題を創り出し、視点や知識を補いながら学生たちの学びを鼓舞し整理するモデレーター兼アドバイザーになります。
学習評価の手がかりが見えやすい
どのように御題に取り組み、どのような成果を創り出したかを通じて、各学生の理解の深さ・広さや思考のパターンを把握し易くなります。
汎用的スキルをまとめて鍛えられる
創造力・構想力・表現力・批判的思考力・コミュニケーション力などの“知的な基礎体力”を総合的に鍛えやすくなります。
適度な競争が学習を加速する
プレゼンやパフォーマンスを通じて学生同士が切磋琢磨し合い、熱量や個性が引き出されます。
「楽しい」が学びの推進力になる
大喜利のような笑いを含む場づくりは、個々人の学生と学習コミュニティーのやる気や興味を喚起することで学習効果を上げ、より独創的・挑戦的な作品を生みやすくします。
この方法の核は、学生を「知識の受け手」から「学びを生み出す側」へ移すことにあります。教員から一方向に知識を受け取るだけではなく、学生自身が問いを見つけ、試し、他者と共有する。その循環が、AI時代に必要な学び方に合っています。