インターネット上には、MOOC(大規模オープンオンライン講義)やOER(オープン教材) など膨大な教育リソースが蓄積されています。しかし、教材が豊富であるほど、むしろ学習者は迷いやすくなります。AIは、この状況を打開し、「学びの導線」を設計する役割を担えるかもしれません。今回は、生成AIチューターやスマートナビゲーションの可能性を検討します。


目次

  • オープンエデュケーションを次の段階へ
  • 生成AIチューターが開く個別最適化の可能性
  • 鍵となるのは「迷わず学べる導線」

オープンエデュケーションを次の段階へ

高等教育におけるAI活用の大きな可能性の一つは、OER(Open Educational Resources)、OCW(Open Course Ware)、MOOC(Massive Open Online Course)など、約30年にわたって発展してきたオープンエデュケーションを、さらに次の段階へ進めることにあります。MOOCだけでも2万講義以上が提供されており、MOOC以外も含めれば、数十万点規模の教材や講義ビデオが存在します。

こうしたリソースの一部は、マイクロクレデンシャルのように学習単位としてパッケージ化されて活用されたり、ハーバード大学が立ち上げたLabXchange (https://www.labxchange.org)のように、分野別に収集・整理された学習支援プラットフォーム上で利用されたりしてきました。

しかし現状では、依然として多くの教材が一般的なネット検索によって「行き当たりばったり」に探されることが多く、リソースが増えれば増えるほど、学習者が自分の目的やレベルに合った講義・教材を見つけ出し、継続的に使いこなすことが難しくなっています。

このような状況は、AIを積極的に活用することで改善できる可能性があります。たとえば、学修履歴・経歴・職歴などの蓄積データをもとに、身につけたい知識や技能、目指す仕事に必要な職能に合わせて、最適な教育リソースや学習方法・学習経路を提案する「教育的スマートナビゲーション」による支援が考えられます。

生成AIチューターが開く個別最適化の可能性

たとえば、Salman Khan によって立ち上げられたKhan Academyは、2006年の設立以来、初等教育から高等教育まで1万点以上のオンライン講義ビデオを制作・無料配信し、あわせて学習支援サービス(一部有料)も提供してきました。さらに同組織が開発したKhanmigoでは、生成AIを活用したパーソナル・チューターが、個別最適化学習を支援する仕組みが実用化され始めています。