AI時代には、大学卒業が学びの終わりではなくなります。必要な知識や技能を学び続け、その成果を積み重ねることが求められるようになるからです。こうした変化は、学位そのものの意味にも影響を与えます。今回は、社会人の学び直しを支えるマイクロクレデンシャルとNQF(National Qualifications Framework)を手がかりに、AI時代に学位は何を証明するのかを考えます。
目次
- 社会人の学び直しを支える仕組み
- AI時代に学位は何を証明するのか
社会人の学び直しを支える仕組み
――マイクロクレデンシャルは、今後の高等教育政策の中でも重要なテーマになっていくのでしょうか。
飯吉 その可能性は高いと思います。背景にあるのは、社会人の学び直しと既存の学位プログラムの限界です。AIの進化によって仕事の内容が変わり、新しい知識や技能を継続的に身につける必要が高まっています。
しかし、日本では社会人があらためて大学で学び、学位を取得するという文化や支援制度は、まだそれほど定着していません。仕事を続けながら学ぶこと自体が難しいですし、フルタイムの学位プログラムに入るハードルも高い。
こうした状況において、マイクロクレデンシャルは有効な仕組みになります。必要な学びだけを部分的に修得できるからです。
たとえば、1年間大学に通わなくても、今の仕事もしくは今後の仕事に必要な知識や技能だけを学ぶことができる。さらに、そのマイクロクレデンシャルによる認証がNQFという学位プログラム内容の共通枠組みと結び付いていれば、後から積み上げる形での学位の取得につなげることも可能になります。
つまり、「今は仕事に必要な部分だけ学ぶ」「将来さらに学んで、それを学位取得につなげる」という段階的な学び方ができるようになるわけです。
これまで大学は若年層を主な対象としてきました。しかし、国内では少子化が進む中で、このターゲット層だけでは学生の確保や大学の経営が難しくなっています。
フルタイムの学生だけを対象とする大学から、生涯にわたって学ぶ人たちを支える高等教育機関へ。マイクロクレデンシャルやNQFは、社会人の学びを支えるだけでなく、学位が社会で果たす役割そのものを変えていく可能性があります。
AI時代に学位は何を証明するのか
――学位が社会で果たす役割が変わるとは、どういうことなのでしょうか。
飯吉 学位が何を証明するものなのか、その意味が変わってくるということです。これまでは学位が、その人の能力や専門性を示す大きな(マクロな)学修認証でした。大学を卒業している、修士号を持っている、博士号を持っている。そうしたことが、その人の能力を保証する一つの指標になっていたわけです。
ところが、AIが急速に進化し続ければ、この前提が揺らぎ始めます。