AIが知識を整理し、必要な情報へ瞬時にアクセスできる時代になりました。学ぶための環境は、これまでになく豊かになっています。しかし、その一方で新たな課題も生まれています。豊富な学習資源の中から何を選び、どのように学びを組み立てるのか。今回は、AI時代の「学びの設計」について考えます。
目次
- 学びに設計図はあるのか
- AIは教育を豊かにするのか
- AIは知識を均質化するのか
学びに設計図はあるのか
――今回、マイクロクレデンシャルやNQF(National Qualifications Framework)の話も興味深かったです。
飯吉 もともとMOOC(大規模公開オンライン講座)が登場した2010年代前半の頃は、現在のような展開まで予想していた人は少なかったと思います。
しかしながら、急速にAI時代に突入した現在から振り返ってみると、マイクロクレデンシャルやNQFのような仕組みが持つ意味が、むしろ以前よりはっきり見えてきたように思うのです。
マイクロクレデンシャルは、知識や技能を小さな単位で認証し、それを積み上げながら学び続けるための仕組みです。
こうした考え方は、高等教育が大きく変化していく中で、今後ますます重要になるでしょう。
そして、それと深く関わるのがオープンエデュケーションです。私はアメリカ在住時代から四半世紀わたってオープンエデュケーションの可能性と重要性を主唱してきましたが、AIを活用することによってその価値はさらに高まると思っています。
たとえば将来的には、世界中のMOOCやオープンコースウェアをAIに学習させ、それを用いて学ぶ人たちに個別の教育支援を行うることも可能になる。そうなると、オープンな学習環境そのものは、かつてないほど豊かになります。
問題は、その先です。何を学ぶべきか。どのように学びを組み立てるのか。どのような能力を社会は評価するのか。
また、学習資源そのものが豊富になるにつれて、学びの設計はむしろ難しくなっていくという側面も無視できません。
AI時代における学びは、マイクロクレデンシャルを単に積み上げればそれだけでよいということではありません。知識や技能を細かく認証することはできても、それが体系的な学びになっているとは限らないからです。
だからこそ、大学は個々の知識や技能を教えるだけでなく、それらを学問として体系的に学べるようにする役割を果たしてきたのです。
一方で、マイクロクレデンシャルだけを集めていくと、どうしてもばらばらな学びになりやすい。そのような状況で誰が学問の全体像を示すのか。どのような学び方をすれば体系的に技能や知識を身につけられるのか。学習者や教員を支援する役割が、今後はますます重要になると思います。
AIは様々な形で学習を支援することができます。しかし、学び全体の方向性を考える役割は、やはり人間に残り続けるべきだと思います。

AIは教育を豊かにするのか
飯吉 AIを教育に活用することには、別の課題もあります。