本編のウクライナ戦争論に戻るにあたって一言。トランプ大統領はまたもやロシアに一方的に有利な「和平案」をウクライナに押し付けようとしていますが、これで持続可能な平和を実現できないことは、今後の配信で詳しく論じます。
こんな暗い状況の中で、一つ朗報があります。ウクライナ出身の安青錦(本名:ダニーロ・ヤブグシシン)が、大相撲九州場所で優勝しました。なんと初土俵から14場所目、21歳の若さでの偉業です。どんな強い相手に対しても一歩も引かず、押しの強さと「内無双」など技の多彩さで勝ちぬく安青錦の健闘ぶりは、ウクライナ人の堅忍不抜にして知略無尽な闘魂を証示しています。故国を離れた彼の思いは複雑でしょうが、日本の地で彼が成し遂げた偉業は、きっとウクライナの人々にも大きな勇気を与えているでしょう。あっぱれ、安青錦!👏
(編集部まえがき) プーチンはなぜ強硬姿勢を崩さないのか。独裁者にとって、自ら始めた戦争を途中で止めることは「敗北」を意味し、権力基盤を揺るがしかねない。しかし戦争継続の代償として、ロシアは経済破綻と兵力損耗の限界に接近している。追い詰められたプーチンはいったいどうするのか。「「挑発されざる戦争」とプーチンの自己保身戦略」に続く第6回。※今回、途中から有料となります。
目次
- ロシア経済の破綻の兆し
- 徴兵政策の限界
- 北朝鮮兵導入の背景
- 市民の大量徴兵という越えられない一線
ロシア経済の破綻の兆し
「ウクライナなど簡単に落とせる」というプーチンの当初の思惑は狂い、いまや3年9カ月も戦争が続いています。プーチンは、戦果を上げ続ければ国民は満足して自己の権力基盤は安泰になると思って、意地になって戦争を続けているが、現実の戦況は膠着している。そして、ロシアは国内に深刻な問題を抱えています。
表面上は見えにくいが、ロシア国民の不満は地下のマグマのように鬱積している。その理由の一つは、経済状況の悪化です。侵攻後、一時は軍需によりロシア経済は復活したかに見えたが、今、戦時経済体制の付けが回ってきている。インフレ率は10%を超え、それを抑制するために政策金利は20%に設定されてきました。最近17%前後に下げられたものの、この高金利は、ロシア経済に深刻な影響を与えています。
軍事産業だけは政府の特別な優遇措置により保護されているが、民間企業は、この高金利によって資金調達が困難になり、経営が圧迫されている。
さらに、軍務に就く者が急増し、高技能の脱国者も増えたため、深刻な労働力不足に陥っています。これにより給与水準は上昇しているものの、それを上回る物価高騰とルーブルの価値低下で、国民の実質的な生活水準は悪化の一途をたどっています。労働力不足・賃金上昇は民間企業も苦しめている。ロシアの財政は軍事支出増大とエネルギー資源収入低減により著しく逼迫しています。
徴兵政策の限界
国民の不満の理由のもう一つは、国民の軍事的負担です。プーチン政権は当初、徴兵された若者を戦地に直接送らないと約束していました。しかし実際には、その約束を破っていたことが明らかになりました。
ロシア軍は徴集兵を一度受け入れた後、形式的に「志願兵契約」に切り替えたように見せかけて、実際には戦線に送り込んでいた。ソ連時代のアフガニスタン戦争に抗議した「ロシア兵士の母の会」は、プーチン体制下で御用団体化していたが、この事実が発覚したときはさすがに政府を追及し始めた。その結果、この手法は継続できなくなりました。

さらに、ウクライナ軍がロシア領土のクルスク州を一部占領したことも重要です。当初、西側諸国は「専守防衛」、つまり、ウクライナがロシア固有領土を攻撃しないことを条件にウクライナを支援していました。しかしクルスク州占領を契機に、西側はこの制限を緩和しました。